世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】シェイクスピア「マクベス」

今年4冊目読了。これまた説明するまでもない、シェイクスピア「四大悲劇」の一つ。

なるほど、シェイクスピアの巧みな修辞と、人間の愚かさの描き出しが散りばめられており、マクベス夫人の堕ちていく様、マクベス自身の不義に不義を塗り重ねていき、偽りの自分を作り上げていく愚かな様などが胸を打つ。人間は「何かになりたい」という動機ではうまくいかず、「何をなしたいがために何かになりたい」こそが真の力を発揮する、というモチーフを感じることができる。

そして、マクベスを唆す3人の魔女。その働き、言葉がマクベスを縛り、堕としていくので、非常にコミカルに語り掛けつつも、実に怖ろしい魔力(まさに魔女!)を持っている。その「言葉の持つ正にせよ負にせよ巨大なるエネルギー」を帯びている、ということ、まさに「言葉を大切にすることが大事」「言霊信仰」とも一脈通じるものがある。勇猛なる義将であるマクベスがあまりにもあっさり欲に目がくらむ、というところが実に理解しがたいところなのだが、実際、人間、「心の底でこうなりたい、と願っていること」を目の前にぶら下げると、理性がすっ飛び、ダークサイドに堕ちていくのかもしれない。幸か不幸か、そんな「望みが叶う」状況になったことがないので、その感覚は想像すらつかないものであるが…

虚栄心、虚栄心、虚栄心。その虚しさはまさに漢字が示すとおり、ではあるのだが、誰しもが心に抱き、それが成長を招くこともあれば、本作のように破滅を招くこともある。感情に飲み込まれるということを一定量諦め、そのうえで「人間は感情に乗っ取られるものである」という諦観を抱いて感情を見つめる。そのくらいしないと、どうにもならないのかもしれない。

40過ぎて名作を読む、ということは、それなりに意味がある。という気がする。