世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】吉川徹「日本の分断」

今年65冊目読了。大阪大学大学院人間科学研究科教授の筆者が、切り離される非大卒若者という現代日本の問題点を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
日本の今後を憂えるすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★☆☆☆

自分の問いは3つ。
『分断社会とは何か?』には「要件としては①境界の顕在性②成員の固定性③集団間関係の断絶④分配の不均衡。格差が世代をこえて再生産されていく」。
現代日本社会の特徴は?』には「個人と社会のつながりが多元・複雑化し、見えにくくなっている。社会経済的地位の格差が学歴から始まる。学校教育は、平等ルールの自由競争に基づいて人材に序列をつけ、社会に効率よく配分する格差社会生成装置」。
『解決には、どうすればよいか?』には「若年軽学歴大卒の実働を評価しサポートする。若年非大卒・若年大卒・壮年非大卒・壮年大卒がたすきがけで相互理解とつながりを持つ。セグメントごとの構成員全員でチームだという認識を持つ」。

ぶっちゃけすぎている部分もあり、アンタッチャブルな「学歴」についてデータに基づいて切り込んでいるところが違和感を覚えるところもある。とはいえ、「社会が流動化すると、変わらない基本属性が人を社会に結び付ける」「団塊の世代が、日本の核家族化・郊外化・高学歴化を担った」など、至当な指摘も多く、基本的理解や問題点の抽出は適切だと感じる。

すべてのプレイヤーが幸せになるためには、相互理解が必要。結局、そういうことなのだろう。新書だが、なかなか手ごわい一冊。