世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】諸富祥彦「本当の大人になるための心理学」

今年61冊目読了。明治大学文学部教授にして、日本トランスパーソナル学会会長の筆者が、心理療法家が説く心の成熟を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
成長、成熟に興味がある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『人間の成熟を妨げるものは何か?』には「若々しく元気で活躍することばかり重要視される世の中の風潮。人に嫌われたら価値がないと思い込む雰囲気。ITの迅速なスピードに無理やり脳を合わせている」。
『成熟とはどのような状態か?』には「自分の感情を内面に保持できる。多様な視点と寛容さを持っている。自分はいつ死ぬかわからないと自覚し、自分本来の可能性に気づいている。」。
『成熟するためにはどうすればよいか?』には「内面に軸を置いた生き方へと転換する。人生のプロセスで運ばれてくる運、縁、チャンスを大事にして、計画や目標にこだわりすぎない。一人の静かな時間に、自分の内側から聞こえてくる小さな声にていねいに耳を傾ける」。

U理論を中心に、学び、実践していることがわかりやすくまとまっている感じ。新書なので、ハードルが低いのもいい。ただ、中身は骨太。「人は、喪失や諦めなしには成長できない」「人は生まれる前から死んだ後まで絶対的に孤独」など、鋭い言葉が飛ぶ。

他方、生きる構えとしては、大人の哲学として「人はわかってくれない。人生は思い通りにならない。人間は本来一人」や、心の器を鍛えるために「人生を本気で生きる。深く自己を見つめる。深く語り合う」や、中高年の残り時間を大切にするために「ひとつひとつの仕事を、心を込めて行う。愛する人たち、大切な人たちとの時間を持つ。日々を味わいつくす」など、非常に深い洞察。

読みやすさを含めて、人生を生きるうえでの一読をお薦めしたい。