世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】武邑光裕「さよなら、インターネット」

今年60冊目読了。メディア美学者にして、QON Inc.ベルリン支局長の筆者が、欧州発のGDPRがネットとデータをどう変えるのかを書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
ネットに関わっているすべての人(→ま、すべての現代人と言ってもいいレベル)
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆

自分の問いは3つ。
『これまでの世の中の流れのトレンドは?』には「個人データのデジタル化が、人間生活の商業的利用を容易にし、拡張・加速する。近代社会の急速な都市化がプライバシーを強固にし、個室と電気がプライバシーを人権にした。多くのプラットフォームは、ユーザーの行動追跡アルゴリズムによって、個人データから莫大な経済的価値を引き出す方法を成熟させ、ユーザーを監視する」。
『今のインターネットの何が問題なのか?』には「個人データの蒐集とそこからの錬金術が、データポリティクスやサイバー犯罪に転用されるリスクが大きい。SNS内では、同質性に基づく閉じたシステムの内部で情報や信念がコミュニケーション・反復され、増幅・強化される。情報技術を通じて個人を体系的に監視することを可能にし、大規模な監視資本主義が実行される舞台となった」。
『今後はどうあるべきか?』には「グーグル、フェイスブックの所有する莫大な個人データを公共インフラとして再構築する。個人が自らの意思で、企業に個人データを提供できる基盤整備。データ保護文化を世界に伝播させる」。

確かに、便利さに隠れて個人データが都合よく使われ、金に化けているのは感じる。他方、欧州発でそれに対する規制があるのは知っていたが、その背景の考え方まで理解できるので、非常に助かる。他方「GDPRは、主民主権とともに、ヨーロッパの復権を内蔵する」と言及されると、何やら怖い感じもする。

何にせよ、「最初に私たちは道具を作る。次に、道具が私たちを形作る」「わたしたちが求めるものが私たちを台無しにする」という過去の名言が、実に不気味に響く。ネットは便利であるが、他方、どのような危険を孕んでいるのか。また、どうすればよいか。考える機会になる良書だ。