世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】スティーブ・リチャーズ「さまよう民主主義」

今年59冊目読了。BBC政治解説者の筆者が、アウトサイダーの台頭と、政党主義の衰退を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
昨今の政治の流れに不安を感じているすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆

自分の問いは3つ。
『なぜアウトサイダーが力を持つようになったか?』には「理想論めいた演説と、たぐいまれなカリスマ性の相乗効果で強烈なパブリックイメージを作る。人気が高まる中で、庶民派の代表であり、主張が今の経済状況に適していると述べる。既存に不満を持つ有権者には、外を好むバイアスがある」。
『なぜ既存の政治家たちは没落したか?』には「リーマンショック以降、支出削減・銀行へのペナルティなどで左右が接近し、アウトサイダーが生まれる隙ができた支出削減で、国が有権者の生活にタッチしなくなり、有権者に置き去りにされた感が現れる。メディアの批判的姿勢により、メインストリームの政治家は自らの力の限界を正直に伝えられなくなる」。
『我々はどう政治家に向き合うべきか?』には「指導者が、自発的・強制的無力化、構造的制約、これ以上ない不信感の中で政権を運営していることを知る。政治は、難題やジレンマを解決するため、いつもあけすけではいられないし、約束・宣言を破らざるをえないのは当たり前と考える。疑うべき根拠があるのに、それに目をつぶって指導者を信頼するのはとても危険」。

確かに、世の中が極端に触れがちであり、そもそも既存の政治はなぜ無力化したのか?ということにしっかりと答えてくれている。骨太で、わかりやすい主張が魅力の一冊。
ソーシャルメディアが政治の熱とスピードを高め、この不健全な流れが政権運営を困難にしている」「国民投票の道を進むと、完全に行き詰まる」「金融危機後、リーダーは自分が知っている近い過去という世界を参考にするしかできなかった」など、まさに現代を指し示す指摘もわかりやすい。

筆者の主張のとおり「既存の政治家なんてみんな同じ、という有権者の見方は、民主主義を危機にさらす」ということを肝に銘じなければいけないだろう。