世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】松尾睦「経験学習入門」

今年56冊目読了。神戸大学大学院経営学研究科教授の筆者が、職場が生きる・人が育つ方法を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
自分、職場の学習に興味があるすべての人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『経験から学ぶにはどうすればよいか?』には「具体的な経験の後、振り返り、教訓を引き出し、教訓を新しい状況に適合する。振り返りのために、行為の中で内省し、他者からフィードバックを求め、批判にオープンになり未来につなげる。体験を楽しむために、集中し、面白さの兆候を見逃さず、仕事の背景を考え、意味を見出し、達観し、後から来る喜びを待つ。」。
『経験を通じて人を育てるにはどうすればよいか?』には「進捗確認と相談をするために、こちらから声をかけ、定期的に個別ミーティングをしてしっかり聞き、こまめに時間をとって取り組みが見えるようにする。内省を促進するため、成功失敗の原因を本人に語らせ、パターンを認識させ、より良い方法を考えてもらう。ポジティブフィードバックを行うために、成功失敗に関わらずまず労をねぎらい、よい点を伝えてから問題点を指摘し、普段の仕事の中で成長したと感じた部分を伝える」。
『どのような心構えで生きるべきか?』には「適切な思いとつながりを大事にする。挑戦し、振り返り、楽しみながら仕事をする。成長し続けるためには、自己も他者も大事にし、周囲や組織、顧客や社会のことを考える」。

学習について、非常にわかりやすくまとめられており、秀逸。「人材を潰してしまう指導者は、1年目の放置と、2年目以降のスパルタ」「自分の思いは、他者から認められたい、成長したいの2つ」「難しい問題は、要素を分割し、できるところから挑戦を広げる」など、なんとなく体感として理解していたことをズバズバと言語化されていく感覚は、読んでいて非常に納得。実際に、現場でもこの感覚を大事にしながらチャレンジしたい、と思わせてくれる。

様々な人が、この意識を持てば、職場はよくなるのではないか。そんな期待を抱かせるし、かつわかりやすい。非常にお薦め。