世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】G・レイコフ、M・ジョンソン「レトリックと人生」

今年54冊目読了。カリフォルニア大学言語学科教授と、南イリノイ大学哲学科助教授の筆者が、メタファーによって人間が生かされているという考え方を書き記した一冊。
 
〈お薦め対象〉
比喩、修辞に興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆
 
自分の問いは3つ。
『メタファーとは何であるのか?』には「ある事柄を他の事柄を通じて理解し、経験すること。人間の思考過程を規定するもの。概念体系に構造を与えるもの。理解をもたらす重要な伝達方法」。
『メタファーの特性は?』には「肉体的なものを基盤として非肉体的なものを概念化している。言語形態の規則性として感じ取るものは、概念体系の中のメタファーと首尾一貫する規則性。新しいメタファーを受け入れると、そのメタファーが含んでいる含意が真実とみなされるようになる」。
『人が生きる・認識するうえで意識すべきことは?』には「メタファーによって、我々は様々な現象を人間という物差しで理解することができる。経験の中から生じてくる概念は、厳密に定義されるというより可変的。自己理解とは、自分の人生に意味を与える適切な個人的メタファーを探し求めること」。
 
当然のことながら、例えがすべて英語で構成されているので、肌感覚にピタリと来るか?というところには苦労する。とはいえ、その苦労を払ってでも読み進めると、非常に興味深い。また「完全に客観的、絶対的な真実は存在しない」「自分の世界観を修正するだけの十分な柔軟性と運と技術と寛大さがあれば、ある程度の相互理解に達せる」など、普段から感じていることを言語化されていることも興味深い。
 
1986年に和訳発刊されており、どちらかというと古典に属するほうだろうが、逆にそれだけ生き残る価値がある本、ということだろう(それを痛感)。ちと手ごわいが、興味があれば、ぜひ。