今年51・52冊目読了。ニューヨークタイムズのコラムニストにして、アメリカ芸術科学アカデミー会員の筆者が、社会的動物である人間の一生を科学的側面から書き記した二冊。
〈お薦め対象〉
人生という大きな流れを、科学の見地で通読してみたい人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★☆☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆
自分の問いは3つ。
『人間の思考・行動の特性は何か?』には「自分の人生の特殊さを過大評価する。ほんの少しの共通点が見つかれば、それを根拠に集団を作る。孤独を感じている人は、周囲の人に批判的な態度を取りがち」。
『人間の成長のカギは?』には「些細なこと、細かいことがきちんとできるようになれば、あとでもっと大事なことを学ぶのがとても楽になる。美徳とは、実践し自分で行動することによってのみ得られるもの。何か一つ自分のすべきことを見つけ、それを生涯続けていく。何か活動する場合、重要なのは内容よりも持続時間」。
『無意識は人間にどう作用するか?』には「無意識は人との調和や絆を求める。人格の深い部分は、外界・他社との関係で成り立つ。その時々の状況、前後関係に大きく影響を受ける」。
あえて、架空の2人の人物の人生を追うような形で、人生の断面ごとに科学的に考えるという手法を取っている(著者があとがきで述べているとおり、教育における「エミール」の手法)のだが、これが却って「自分に一般化できない」という読みにくさを生んでしまっている気がする。ストレートに、ライフイベントごとに科学的な見地を述べるほうが読みやすかったように思うが…
とはいえ、「自分の無知を認識し、そこからすべての知恵が生まれると考える」「道徳心を向上させる社会習慣は、礼儀作法、他人との会話、組織の定める規則」「意思決定は私たちの知らないところでなされ、意識にはあとで知らされる」など、意義深い洞察も多く、読んで面白い本であることは間違いない。
科学で人間を見てみたい、という人であれば、楽しく読めるだろう。ボリュームがかなり多いが…