世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】トニー・ワグナー「未来のイノベーターはどう育つのか」

今年45冊目読了。ハーバード大学テクノロジー起業センター初代フェローの筆者が、現代における子供の可能性の伸ばし方を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
子育て世代、子供を教える立場にある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★★

自分の問いは3つ。
『イノベーターに必要なものは何か?』には「好奇心、コラボレーション、統合的思考、行動志向・実験志向。クリエイティブな思考力、専門性、目的意識の3つの力。自分が情熱を傾けられるものを見つける。内省力」。
『イノベーターを育てるために、子供に与えたほうがいいものは?』には「自由な遊びと発見をたっぷり与える何の決まりもない時間。好きな本をプレッシャーなく読ませる毎日の読書。型破りな教員が指導する分野横断的コラボレーションプロジェクト」。
『イノベーターを育てるために、子供にどう向き合えばよいか?』には「やりたいことをやるのはよいが、基本的ルールを守らせる。夢を追いかける重要性を信じる。子供に深い敬意を払いながら信頼関係を築く。子供が自分らしくいられる余地をたくさん残しておく。大人の判断より子供の知恵を信頼する」。

様々な実例に基づく説明が、実にインパクトがある。そして、親が型にはめようとすると、子供のクリエイティブな力を封殺することもよくわかる。「アウトソーシング、機械化の影響がないのは、イノベーターと起業家だけ」「従来の教育は子供を無気力にし、情報急増に対応できない」「イノベーションとは、この世界で意味があり、人々にインパクトを与え、人をワクワクさせることをやる」という記述も、心に響く。

昔のように「先代の教えを、次代に引き継ぐ」では、子供を未来の社会で生き残れないようにしてしまう。既存の概念にとらわれず、子供を信頼する。難しいのだが、子供の自立、その子らしい人生という観点からは、こうするしかないんだろうな。お勧め対象の方は、ぜひ、ご一読を。