世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】デイヴィッド・イーグルマン「あなたの知らない脳」

今年30冊目読了。スタンフォード大学准教授にして神経科学者の筆者が、意識と脳との関係を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
脳と意識のいずれか(または両方)に興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★☆☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★☆

自分の問いは3つ。
『脳の特性は何か?』には「解決すべき課題を見つけると、いちばん効率的に成し遂げられるまで、自身の回路の配線をやり直す。さまざまな党派同士の対話が進行し、行動という1つしかない出力チャンネルを支配しようと争う。身体の動きを解釈し、それにまつわる物語を組み立てる。」。
『我々の認知・行動の特性は?』には「そこにあるものではなく、脳が伝えてくるものを知覚している。意識は手柄をほしいままにするが、脳で始動する意思決定の大部分は傍観者。自分の行動を、自分が信じているほど操縦していない」。
『我々は何に留意すべきか?』には「しばしば錯覚に陥る自分の感覚を信頼しない。自分自身の理性システムを信頼できないときは他人のものを借りる。ワンパターンな解決に陥ることなく、重複する戦略を探求し、構築し続ける」。

面白いし、主張には非常に納得できるのだが、いかんせん、文庫本のわりに読み進めるのに苦労した。原本が悪いのか、和訳が難解なのかはわからないが…。それゆえ、星の評価は下げているが、この手の話が好きな人には面白く読めるのではないかと思う。世の中、しばしば「絶対●●だよ!」という人が一定数いるが、それがいかにいい加減な脳の思い込みに基づいているのか、ということがこの本では白日の下にさらされる、という感じがする。「俺は何者なのか?」と哲学的な問いにも結び付くような、意識の曖昧さをまざまざと見せつけてくれる、という点で、逆に脳を柔軟に保つ姿勢を取れる、という不思議な効用が感じられる。この分野が好きであれば、お薦めしたい。