今年29冊目読了。専修大学名誉教授の筆者が、読書、読書界を通じて社会科学を論じた一冊。
〈お薦め対象〉
読書、学びということに興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★☆☆
自分の問いは3つ。
『読書とは何であるのか?』には「本でモノが読めるように本を読む。情報を見る目の構造を変え、情報の受け取り方、有益なものの考え方、求め方を変える。素晴らしい宝を発見する感覚と術と革新を会得させてくれる」。
『本を読むときの心構えは?』には「信じて疑え。熟読、熟考で具体的事実を解明する。自分を殺し、本に内在させ、本を通して著者が言いたかったであろう言い分を、耳を澄ませて聞く」。
『学ぶとはどういうことか?』には「論証されていないことに自分の生涯をかける。概念装置を脳中に組み立て、それを使ってものを見る。情報に流されている事態から情報を使いこなす状態に変える」。
このほかにも「疑っているひまがあったら、何かを踏み込んでやる」「努力によって得られるのが人生の楽しみ」など、人生への示唆が多い。ただ、いかんせん、丁寧な筆致が逆に読み取りにくさを生んでいるきらいもあるので、少し評価を下げた。新書でこれはちょいと面倒だ(もちろん、岩波新書だから、新書とはいえほぼハードカバー並みの中身もあるのはわかっているが)。
いずれにせよ、時代は移ろいつつも、テキストが固定されていて、かつネットニュースのように流転変質を前提とするような情報ではない「書籍」というメディアの強さは、変わらないんだろうな、と感じる(電子か紙かは別として)。まぁ、読書を愛する端くれとしては「目が曇っている」のかもしれないが、こういった本は、その不安な気持ちを救い出してくれる。