世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】ジョナサン・ハイト「社会はなぜ左と右に分かれるのか」

今年25冊目読了。ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授の筆者が、対立を超えるための道徳心理学を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
集団、社会の動きに興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★☆

自分の問いは3つ。
『人の思考特性は?』には「道徳的判断を情動的に速やかに下し、あとから正当化する理由を探す。他人が自分をどう考えているか気になって仕方がない。因果応報を望み、進んでそれを実現しようとする」。
『集団の行動特性は?』には「自集団が何かを達成しなければならず、リーダーが自身の鋭敏な抑圧検出器を刺激しないと確信できれば人は進んでその人に従う。神聖さは人々を結びつけると同時に、その実践に恣意性が伴う事実に対し人の目をくらます。左派は普遍主義に向かうため、忠誠という基盤を大事にする有権者を取り込めない。」。
『道徳とは何なのか?』には「人々を結びつけると同時に盲目にする。集団内の緊張を集団間への緊張と結びつける。正義心を受容する道徳基盤は、ケア、自由、公正、忠誠、権威、神聖」。

まず、タイトルの和訳が気に入らない。明らかに売ろうとしてこのタイトルにしているのだろうが(まぁ、確かに原題の「The righteous mind」を直訳した「道徳心」というタイトルでは売れない気がする)、何となく詐欺に遭ったような気がする。
とはいえ、中身の記述は骨太。集団、道徳心についての洞察は鋭く深い。「直観は認知であり思考ではない」「怒りを制御できると、義憤で性急な結論を下すことがなくなる」「集団を理解するには、彼らが神聖視するものを追う」「人間の心は、論理でなく物語を紡ぎ出す処理装置」など、納得の記述多数。
中身を重視すれば、一読をお勧めしたい。