世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】藤原辰史「戦争と農業」

今年20冊目読了。京大人文科学研究所准教授の筆者が、戦争と農業の関連を切り口に、食についての提言を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
食と農業に関心のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★☆☆☆

自分の問いは3つ。
『農業はどのように変化してきたか?』には「農業を変えた技術は農業機械、化学肥料、農薬、品種改良。飢餓を二度と引き起こさせない政策が選民的になる。ファシズムスターリニズムは飢えの恐怖が支える」。
『社会の流れを見るときに押さえるべきことは?』には「暗さを認識し、光に対する感度を研ぎ澄ますことで、いま何が大切かが見える。現代社会の仕組みの根本は、分業と競争。技術は、それを用いる人間も変える」。
『食について、我々が認識すべきことは?』には「歴史の原動力に胃袋がある。幸福追求の中心には食べ物を据えるべき。食べることは、世界に育ててもらうこと」。

タイトルと、キーメッセージがずれているような気もするので、少しもやもや感はあるが、新書のわりに、主張は骨太。どちらかと言うと、「戦争と農業の関連」という本と「食はどうあるべきか」の2テーマで分冊されている、と考えたほうがいいな。ってか、筆者の筆致力なら分冊したほうがいい気もするが。

ともあれ、食に対する洞察が深く、非常に興味深い。さらりと読めて深く学べる(=コストパフォーマンスがよい)ので、お勧めしたい。食は、人間にとって避けて通れないものだから。