世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【読了】谷口智彦「明日を拓く現代史」

今年16冊目読了。日経ビジネス編集委員にして、内閣審議官を務めたの筆者が、今後に役に立つ歴史の読み解き方を書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
世界の中にある日本の未来を考えたい人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★☆

自分の問いは3つ。
『歴史を学ぶ意義は何か?』には「場所の意味、可能性を知る。時代を生きた当事者の身になってみようと努める。プロパガンダは、先入観を作った者に軍配が上がる」。
『日本人が押さえるべき近代史のポイントは?』には「日本人は、東京オリンピックに軍事と平和の和合という愉悦を感じた。戦後は、英国が米国によって権益を奪われ、戦いを阻まれ、誇りを踏みにじられることに耐え、忍んだ過程。中国がインドを攻撃、その後パキスタンへ接近し、インドは対中不信になった。」。
『今、我々は何に留意して世界を見るべきか?』には「想像力を養うには、社会の安全、子供の行動の自由が大事。成長を目指す前進力は、明るい自己肯定と、身の丈を自覚した上での適量の自信。変革の条件は、気力体力が横溢した若い世代の塊、コミュニケーションの量、情報取引コストの低さ」。

この他にも「日本に欠けているのは、同時代の危機に対する感受性と、治者たるものの責任意識」「同じ参加者が同一の理論で似た主張を繰り返しているだけでは、相手の立場を一層硬直化させる」「ネットワークは、ひとたび出来上がると自己増殖を始め、覆すのは難しい」など、納得の記述が多い。

多面的に、重層的に世界を見る。そんな感覚を研ぎ澄ますのによい一冊。一読をお勧めしたい。