今年14冊目読了。東大大学院マクロ経済学教授の筆者が、長寿、イノベーション、経済成長について書き記した一冊。
〈お薦め対象〉
人口動向に興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★☆
自分の問いは3つ。
『社会はどのように変化してきたか?』には「20世紀に入るまで、人が密集する都市は田園地帯に比べて人の生存に不利。子供を生んでも育てられない恐怖心、それによる晩婚化、非婚化が人口を抑制する。20世紀に、不平等は経済の成長の源泉ではなく、逆に桎梏となった。」。
『社会に変化をもたらすものは?』には「先進国の経済成長を決めるのは、人口ではなく、イノベーション。平均寿みたいは、一人当たりの所得水準と高い相関関係がある。貧困のプレッシャーにより、人間は努力し文明を進歩させてきた。」。
『日本は少子高齢化とどう向き合うべきか?』には「超高齢化社会において、人が人間らしく生きるには、膨大なプロダクト・イノベーションが必要。超高齢化社会の平等を維持するための制度が、年金・医療などの社会保障。イノベーションの担い手にとって、何よりも未来に向けた自らのビジョンの実現こそ本質的」。
全体のトーンは淡々としているが、なかなか興味深い。「孤独、つまり時としてたった一人となることは、人間が自らの考えや精神を高めるのに不可欠」や、「戦後の日本の寿命長化は、経済成長による所得増、医学の進歩、皆保険」などは、とても納得。人口動向を、マスコミの流れだけおいかけるのではなく、冷静に見るにはいい本だろう。