世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

クリスティアン・ウォルマー「鉄道と戦争の世界史」

【読了】今年30冊目読了。英国の運輸問題キャスター兼作家の筆者が、鉄道と戦争の関連を世界的に検証した一冊。


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〈お薦め対象〉
全ての鉄道マニア、軍事マニア
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆(興味のない人には★☆☆☆☆)
〈実用度(5段階評価)〉
★☆☆☆☆

自分の問いは3つ。
『戦争の特性は何か?』には「戦争の勝敗は武器類・戦闘員数では決まらず、兵站で決まる。平坦地での戦いにおいて、生身の人間は機械に勝てない。次の戦争を予想する際、人は常に心中で自分が最後に戦った戦争を戦い続ける」。
『戦争における鉄道の役割とは?』には「鉄道には、兵士を戦場へ送る・撤退という双方向性がある。鉄道網が、戦略展開のテンポと形態を決定する。多くの兵隊と弾薬を前線へ送り、負傷者を後方へ運び去ることで大量殺戮を可能にした。」。
『戦争における鉄道の制約とは?』には「適切に管理されないと、その優位性が失われる。円滑な運行には、特別な几帳面さと、焦点を精密に絞り込む頭脳が必要。ゲージの違いが攻撃側の妨げとなる」。

著者の鉄道愛と、半ば偏狭的な調査力には舌を巻くが、日本語版の読者としては「なるほど、そう見るのか?!」という視点が多い。とかく、独立島国ということで、勝手にイギリスに親近感を抱くことが多いが、(言い方は悪いが)朝鮮半島というバッファーゾーンを介して大陸と向き合う我が国と、ドーバー海峡という白兵戦で大陸と向き合うイギリスの違いが、鉄道観にも現れているような気がする。
いずれにせよ、鉄道好き、軍事マニア、そして兼務者(かなり重なり合うと思われる)には、一読いただきたい。