世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

高坂正堯「外交感覚」

【読了】今年27冊目読了。京都大学法学部教授にして、国際政治学者の筆者が、外交の原則とその捉え方を1985年に書き記した一冊。

〈お薦め対象〉
国際情勢を読み解くことに興味のある人
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
〈実用度(5段階評価)〉
★★★★☆

自分の問いは3つ。
『外交の原則とは?』には「安定を保とうとする政策は必ず行き詰まる。良いものと悪いものを割り切ることは敵を増やすだけ。真の妥協的解決は、双方の原則の最低限の承認を伴う」。
『外交上、どうすればよいか?』には「人間の力の限界を認識して、謙虚に、諦めず、素直に取り組み、感覚を呼び覚ます。リーダーが大胆に未来を語り、イニシアティブを取り、人の活力をかき立てる。歴史に関心を持ち、光と陰の両面を認識しつつ、為すべき判断をする」。
『国家、集団の行動特性は?』には「心の底で自らを恐れている者は残酷になる。戦争を生むのは、自己の正義への狂信。自己閉鎖、独り善がりは過ちを生む。特化したものは、めざましい成功を収めるが、その奇形性に苦しむ」。

正直、政治学のような社会学は、10年一昔どころか、5年で古臭くなってしまいがち。しかし、扱っている事象は当然ながら古典だが、その指摘の鋭さは、今尚、混迷を深める世界の流れを見るにおいて、変わらぬ光芒を放っている。人間に関する観察の鋭さが、その主要因だろう。
政治学というより、人間学として、非常に興味深く読ませてもらった。