世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【八萬大蔵経の納められた伽倻山海印寺】

〈ここが凄い!〉
現存最古の大蔵経版木が眠る古刹
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★☆☆
版木の持つ意味合いがわかっていないと、なかなか凄さが理解できない。
〈アクセス(5段階評価)〉
★★★★★
日本からソウルまで飛行機で2時間。KTX韓国新幹線)で東大邱まで2時間、そこからバスで1時間半。
保有国〉
大韓民国
〈登録年〉
1995年
〈登録基準〉
ⅳ:人類の歴史上において代表的な段階を示す、建築様式、建築技術または科学技術の総合発展段階、もしくは景観の遺産。

ⅵ:人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結びつく遺産。

〈概要〉
●国難克服を発願した版木
 高麗時代に、モンゴル軍侵攻を仏力で撃退しようと祈願して8万枚以上が1236年から16年もかけて作られた。版木1枚の大きさは縦24cm、横69cm、厚さ3.8cm。全面に薄く漆が塗られている。

●木版保存用の蔵経板庫
 1488年に建てられた木版保存用の建造物で、床には板を敷かず木炭と石灰・塩を重ねた土間になっており、湿度調節が行える。建物は角材を横に重ねた外壁の校倉造りで、風通しがよい。

〈課題〉
・気候変化に伴う版木の保存状態の変化

〈参考図書〉
旗田巍「元寇
副題の「蒙古帝国の内部事情」のとおり、元の猛威を落ち着いて分析するとともに、それに対して唯々諾々と従ったわけではない高麗の権謀術数(最終的には元に従うが)を記した異色の書。
これを読むと、当時の蒙古の凄まじさ、いわゆるパラダイムシフトの波を感じられる。また、歴史は日本から観るだけでは感覚が異なる、ということを教えてくれる。

〈行ってみた感想〉
とにかく、山深い寺であった。ソウルからKTXに乗り、東大邱へ、そしてそこからバス。入口からは、ひたすら登山道のごとし。登れど登れど…という感じ。ようやくたどり着いたが、「ここが世界遺産なのか?」という感は否めない。
しかし、こんな山奥で、国難回避を(多大な国費を投入して)祈らざるを得ないということは何なのか?ということは、感じた。
今は、世界遺産でなかりせば、静謐なる寺院。それが、こうして観光客に晒されるのも因果なものだ…と感じずにはいられなかった。