〈ここが凄い!〉
樹齢千年以上の屋久杉などが生み出す美しい景観
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★★
日本で唯一「自然美・景観美」の登録基準を満たした景観は必見。
〈アクセス(5段階評価)〉
★★★★☆
飛行機を乗り継いでいく必要があり、また世界遺産エリアをじっくり見学するには2泊3日は必要。
〈保有国〉
日本
〈登録年〉
1993年
〈登録基準〉
ⅶ:ひときわ優れた自然美や景観美、独特な自然現象を示す遺産。
ⅸ:動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示す遺産で、現在進行中の生態学、生物学の代表例も含まれる。
〈概要〉
●植物の垂直分布
狭い島内で、海岸地帯から標高1,000m以上の高山地帯まで存在する。標高が上がるごとに植生が変化する「植物の垂直分布」が見られ、標高100mまではメヒルギなどの亜熱帯性植物、標高800mまではシイ、カシなどの暖温帯常緑広葉樹林。1,200mまでは暖温帯針葉樹林、標高1,200m以上では冷温帯針葉樹林が見られる。
●固有の動物
15千年前に九州本土から切り離されたため、ヤクシカ、ヤクザル、ヤクシマジネズミ、ヤクシマヒメネズミなど16種の哺乳類、ヤクシマカケス、ヤクシマヤマガラなどの167種の鳥類などが生息する。
●独自の樹木・屋久杉
屋久島の杉は標高600~1,800m付近に分布する。花崗岩の地盤のために養分が少なく、成長スピードが遅いことから年輪の幅が狭く、硬くなった幹にはほかの地域の杉の6倍以上の樹脂が蓄えられている。
〈課題〉
ヤクシカの食害、観光客のゴミや糞尿被害。台風被害の影響も受けやすい。
〈参考図書〉
山尾三省「屋久島の森のメッセージ」
世界遺産としての屋久島を学ぶのであれば、中島成久「森の開発と神々の闘争」のほうが、「手つかずの自然というのは幻想でしかなく、屋久島の歴史は保存と開発の闘いの歴史であった」ということがよくわかる。
しかし、ここはあえて、生物学・歴史学的アプローチではなく、移住して四半世紀を超える詩人である筆者が、豊かな自然について感性のままにコメントをしている本書をお薦めしたい。人間は、自然の中で研ぎ澄まされる。その感覚を瑞々しく伝える本書こそ、日本の誇る自然遺産・屋久島の魅力を伝えてくれる、と感じる。