世界遺産マイスター/国宝の伝道師Kの「地球に感謝!」

世界遺産検定マイスター、国宝の伝道師保有の読書好き。書籍、世界遺産、国宝という切り口でご案内します。最近は「仕事の心理学」として、様々な事象を心理学的見地から考察しています。

【広島の平和記念碑(原爆ドーム)】


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〈ここが凄い!〉
人類初の原子爆弾がもたらした悲劇を未来に伝える
〈お薦め度(5段階評価)〉
★★★★☆
暗い歴史ではあるが、科学を扱う人間の愚かさを感じるには、不可欠。
〈アクセス(5段階評価)〉
★★★★★
広島まで新幹線で四時間。市街地にあるため、アクセスはよい。
保有国〉
日本
〈登録年〉
1996
〈登録基準〉
ⅵ:人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術などと強く結びつく遺産。

〈概要〉
●世界平和を目指す活動の記念碑
 ICOMOSの報告書に「歴史的価値や、建造物としての価値は認められないが、世界平和を目指す活動の記念碑として、世界でもほかに例を見ない建造物」とされている。

被爆後の惨状をそのままに残す建造物
 原爆投下では、爆心地の北西約150mの至近距離で被爆。爆風と熱線によって建物の屋根や床はすべて破壊され、壁は建物の大部分において一回の上端以上がすべて倒壊した。しかし、衝撃波をほぼ真上から受けたため建物の中心部分は倒壊をまぬかれ、外壁と鉄骨の骨組みが残った。


〈課題〉
経年劣化をどう補強していくか。また、市街地故、周囲の景観問題もつきまとう。

〈参考図書〉
頴原澄子「原爆ドーム 物産陳列館から広島平和記念碑へ」
原爆の悲惨さについては枚挙に暇がないくらいの書物が出ているが、この書は「広島物産陳列館」という建物が原爆ドームとして保存され、世界遺産登録されるまでを描き出している。
そもそもの建築の特徴から、原爆投下後の取り壊しの方向性、そこから保存に向かった流れなど、「原爆ドーム=保存された平和記念碑」という前提になっている現在の視点からすると、かなり目から鱗。
そして、こうした人類の過ちを今に伝える「負の遺産」から目をそらしたくなる人間心理、それ故に、なおのこと保存が重要となること、を痛感する。